税務の実務経験者っぽさの演出には採決事例集がオススメ

経理で仕事をしていくうえでは、請求書を処理するにしても何をするにしても、基本的な消費税の知識や法人税の知識は必要です。例えば、その会費に消費税は課税されるか、その支出は修繕費として落とせるか、など。

今回は、「ちょっとわかってるヤツかもしれないぞ」と思わせるためのツールをご紹介しましょう。

国税不服審判所の採決事例集には、税務調査の争点が蓄積されている。

国税不服審判所というのは、税務調査を受けて更正(要するに追徴課税)を受けた後、納得が行かない場合に審査をしてもらう、プレ裁判所のようなものです。ここには、毎年2000~3000件くらいの不服申し立てが提出されていまして、その審査結果(「採決」と言います)が、Webサイト上で公開されているんです。

そもそも、国税不服審判所とは何か?

非常に細かい話ですが、先に手続き的な話をお伝えしておきます。まあ、こういう雑学的なネタを知っているだけでも、学があるようにみえたりするのでお付き合い下さい。

まずは更正処分を行った当局の税務署長(又は国税局長)に対して、異議申し立てをします。ここで追加の資料を提出したり説明したりして、どうにか更正処分を変えてくださいよとお願いするわけです。まあ、更正処分を取り下げたら、その分だけ、その税務署の課税額のノルマ的なやつが増えるので、普通はなかなか変わりません。

それで、異議申し立てをしても更正処分が変わらずに、これでは埒があかないぞという場合に、国税不服審判所に対して、不服申し立てを行うわけです。ここで、税務署とは独立した国税不服審判所という機関が、処分の妥当性を審査して、処分を取り消すか、不服申し立てを棄却するかについての「採決」を示します。

それでもなお納得が行かない場合、いよいよ弁護士を立て、税務訴訟という裁判所での司法判断にステージが移ります。日本国は憲法84条で、租税法律主義というものを定めています。これは、税金を課すには何であれ法律に基づく必要がある、ということなんですが、要するに国税不服審判所の採決が出ても納得できない案件というのは、「行政機関である税務当局の分際で、税法について勝手な解釈をして課税してきている!司法権(≒法律の解釈権)がないくせに生意気な!三権分立を無視した越権行為であり、断固裁判所の判断を仰ぐべし!」という状態になっているということです。ここまできたらもうケンカ腰です。

採決事例集の調べ方は簡単。経理の先人の血と汗と涙が見えて面白い。

話が逸れました。本題に戻ります。

採決事例の調べ方は以下の通りです。

まずは、国税不服審判所のサイトにアクセスし、「採決要旨の検索」をクリックします。

国税不服審判所_トップページ

画面が切り替わるので、「採決要旨検索システムへ」をクリックします。

国税不服審判所_採決要旨検索1

「キーワード検索」をクリックします。各税法の構造を理解している人は争点番号検索でも良いですが、私はキーワード検索の方が好きです。

国税不服審判所_採決要旨検索2

調べたい税法を選択し、キーワードを入力しましょう。例えば、「法人税法」で「重加算税」が含まれる事例を探してみましょうか。

国税不服審判所_採決要旨検索3

画面下の方に「検索開始」があるので、それをクリックします。どんな結果が出てくるか楽しみですね。

国税不服審判所_採決要旨検索4

採決要旨が表示されました。ほら、簡単でしょ。

国税不服審判所_採決要旨結果1

これ、面白いんですよ。請求人(=不服申し立て人=会社側)がどのようなことをして更正処分を受けて、どう言い訳したかが全部乗っているんです。例えば、

国税不服審判所_採決要旨結果2

読めますか?こんなことが書いてあります。

請求人は、当該事業年度の翌事業年度にその額が確定した本件相当の対価に関し、あたかも当該事業年度に確定した債務のごとく、その事実を仮装し、請求人の当該事業年度の総勘定元帳に記載していたものと認められ(中略)青色申告の承認の取消要件にも該当すると言うべきである。

要するに、「ホントは来期の費用なんだけど、今期の費用として計上しておこう」という費用の前倒し計上をしたわけです。おそらく、当期は利益が出てて、税金を少なくしたかったんでしょうね。そしたら、税務署に見つかりまして、重加算税を取られただけではなく、青色申告まで取り消すぞと怒られた、という事例です。手口が透けてみえて面白いですね。

親会社子会社間での債務を免除してあげたら寄附金認定されたとか、さまざまな事例が出てきますので、ちょっとグレーな処理をするときは、ここでキーワード検索をして、「こんな話出てきますから要注意っすわ」とか言ってあげれば、上司からの評価もきっと向上することでしょう。

また、経理実務経験者でも意外とこのサイトのことを知っている人が少なかったりするので、中途採用の面接でもこのあたりの話を少ししてあげれば、税務に詳しい感じを演出できること請け合いです。

投稿者:

白賀

30代。 経理職で転職を繰り返し、現在某社でファイナンスを担当しながら、非上場のスタートアップ会社でCFOを勤めています。

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