経理職の転職で役に立つ資格・スキルとは

いま、経理職で仕事をしている人の中には、他社への転職を考えている方もいるかと思います。

今回は、今の職場を辞めて、横滑りで別の会社で経理として転職しようとする場合に、使える資格と使えない資格を紹介します。

経理職の転職で使えない資格・スキルはこれだ!

会社の規模別に、使えない資格をまとめると、以下のようになります。

 今の職場の規模  役に立たない資格
 上場企業又は従業員300人超  簿記2級
  その他中小企業  簿記3級

簿記2級が経理実務経験者にとって転職時に役に立たない理由

簿記2級を取ることで得られる知識は、間違いなく役に立ちます。持っている人と持っていない人とで、成長のスピードが変わります。これは、もう何人も経理で働いている人を見てきたうえで確信できる、間違いのない事実です。

しかし、既にあなたが中規模以上の会社で経理職として勤めているのであれば、簿記2級は転職市場はあまり役に立ちません。この理由わかりますか?

簿記2級なんて、持ってるって言っちゃえよという甘い罠

答えは、いわゆるキャリアエージェントの方の一部(あくまでも一部ですよ)が「経理で3年以上働いていて、月次決算や期末決算を経験しているなら、簿記2級って書いちゃって良いですよ」とアドバイスして回っているからです。すごいですよね、これ。私もこの話を聞いたとき、ビックリを通り越して、少し引きました。笑

たしかに、簿記2級の知識って、中途半端で、ああこれは持っているなって確証を得にくいところがあります。

簿記の教科書や問題集なんかでは「債権金額の1%に対して貸倒引当金を計上した」とか言いますけど、実務ではその1%がどうやって出てきたかの方がむしろ大事で、貸倒引当金を計上すること自体は当たり前みたいな世界があるわけです。だからどこまで深いかわからない。

私がもしチャレンジ精神旺盛なキャリアエージェントだったら「2級持ってますって言っちゃえよ」なんて無責任な虚偽表示をさせるだけではなく、もっと綿密にネタを仕込ませます。税法と金融商品取引法とでは、貸倒引当金の計上次の実績率の算定期間が違うんで面倒ですよね、とか。(2015年4月1日より開始する事業年度より、貸倒引当金が損金算入できなくなっていますので念のため)

ただ、あなたがもし派遣社員や一般職としてこの業界で働いていて、例えば、日々出張旅費や立替経費の精算や、支払業務などばかりを担当させられていて、もっと別の仕事がしたいということであれば、簿記2級は、向上心を示すツールとして使えます。繰り返しますが、あくまでも、能力を示すものではなく、向上心を示すツールです。「今までの実務を改めて体系的に整理したいと思って勉強しました」という程度の説明にしておくのが良いでしょう。

簿記3級は、実務屋からも馬鹿にされている。

個人的にはムチャクチャ腹立たしいところですが、一切簿記の勉強をしたことのない人に限って、簿記の3級なんていらないよとよく言います。まずはやってから言いましょうよ、やってから。

とは言え、一方で、3伝票制とか、5伝票制とか、知らなくても実務にはほぼ影響ゼロなのも事実です。

例えば、売掛金の入金があったときに、振込手数料が控除されたとして、「入金金額は入金伝票で作成して、差額は振替伝票で仕訳を切らなきゃ。それから、得意先台帳に消し込みを書くときは、入金分と相殺分を2行に分けて書かなきゃ」なんて考えている人、いないですよね?

普通はシステムを開いて、入金処理メニューから得意先を選んで、相殺額を入れて手数料を選択すれば終わりですよね。下手したら入金データをオンラインバンクから取得してシステムに流し込んだら自動処理で行われるレベルです。

そんなこと覚えるくらいなら印紙税の税率でも覚えてくれた方がまだマシです。800万円の手形を発行するときに、500万円と300万円に分ければ印紙税を400円節約できるぞ、みたいな。

簿記は、計数管理のためのツール。大事なのは、計数管理の方

エクセルや会計システムがなかったころは、まずは各勘定や補助簿を締めて、それらを後からまとめて集計するというバッチ処理で決算をしていました。正直、簿記3級は当時の流れをいまだに引きずっている部分が残っています。その部分を知っておくメリットは、ゼロではありませんが、経理が本来行うべき仕事からはやや遠いです。

中小企業では、むしろ、簿記3級を持っていることよりも、人当たりが良さそうで、小さなコスト削減の提案とかもコツコツとできる人の方が、ウケが良いです。

経理職の転職で使える資格・スキルはこれだ!

逆に、経理職で転職するうえで役に立つ資格は以下のとおりです。

 今の職場の規模  役に立つ資格
 上場企業又は従業員300人超  英語、簿記1級、FASS
 その他中小企業  FASS、簿記2級以上

経理職で満足に英語ができる人は、本当に少ない

経理で英語ができる人って、本当に少ないんです。

中途採用の募集を掛けても、どいつもこいつも「海外子会社の経理担当者とのメールやり取り」どまりです。このレベルだと、経理の転職市場では、全く競争力ありません。だって、Please find attached fileとかCould you fill in the form of attached consolidation package and send it back to me by xx/xxとか、その程度でしょ?そんなの一回覚えたら誰でも使えますし、みんな前任者から引き継いだ文言をそのまま使ってます。英語できないの、バレちゃってます。

ただ、そこはひとつ逆転の発想で、冷静に考えてください。

そもそも会計はひとつの言語みたいなものですから、売掛金を表現しようとしたら、Account receivable以外あり得ないんです。そもそも、経理で使う英語なんて、何かと比べて多いとか少ないとか、あるとかないとか、足りるとか足りないとか、内訳は何かとか、金を送れとか、そんなのばっかりです。税務調査とかだって、聞いてくることはどこの国だってほとんど一緒です。

だから、一回良く使うフレーズ集を用意したら、もうそれを馬鹿の一つ覚えみたいに使い倒すだけで、会話だって、大抵は乗り切れるんです。聞き取れなかったら、「アクセントになれてないのでゆっくりしゃべってね」と言えば良いだけの話です。

ちょっと練習して、「海外経験はないですが、経理に関することであれば、英語でコミュニケーションは取れます」と言えるようになりましょう。それだけで、求人の幅がむちゃくちゃ広がります。どのくらい求人の幅が変わるかの確認方法は、別の記事に書いておきました。英語を話せるようになるための練習方法等については、また別の記事で書きます。

実務経験がある人で、後から簿記1級を取る人も、かなり珍しい

上の方で書きましたが、比較的大きい会社で勤めてたら、簿記の2級くらいの実務をやっていたものとして取り扱われています。実際に、中途採用で募集をかけても、一部コンサルタントの人は、「話を聞いても本当に実務を良く知っているので、簿記2級くらいの知識はあります」とか言ってきます。候補者がIT業界やサービス業界の経理屋だったら、絶対原価計算知らんだろうに、無責任なこと良く言うわ、ホント。

実は、現場に出てくる面接官(経理課長くらいですかね)やCFOがキチンと勉強している有資格者であれば、なんちゃって2級ホルダーと、本当に勉強している2級ホルダーの差は、ある程度見抜くことが可能です。特に、候補者が話を盛るタイプの場合は、非常にわかりやすいです。詳細はまた別の記事で書こうと思いますが、モノの考え方が違います(逆の言い方をすると、バレないようにする方法もあります)。そういう面接官に当たっちゃった場合は、「学生時代に取りましたけど、それ以来ですね。笑」くらいにしておく方が、バレるリスクは少ないと思います。

さて、話がやや横にそれましたが。簿記を持っていなくても実務はできてしまうので、運よく経理に最初から配属された人は、簿記の勉強をしない人が多いです。繰り返しでますが、そんなの取らなくても「その会社での」実務はできちゃうので。

だからこそ、社会人になって経理に配属されてからの簿記1級は、転職市場において非常に強力です。非常に強い向上心と、前職の変な実務に毒されていないことの強い証明になります。ここが、実はウケが良いポイントです。

簿記1級まで取ると、実務が、どの程度理論から外れているかがわかる

会社によって実務はさまざまですが、ひとつの会社に長くいると、その実務が当たり前になっちゃうんです。そんな会社から、また別の実務をやる会社に行くと、全く違う実務に見えてしまうことがあります。ところが、簿記1級まで取っておくと、ああこの会社はこっち側に実務が偏っているなというのがすぐにわかります。だから、逆の会社に行っても対応できるんです。ここを嫌味にならないように言えばいいんです。

「実務というのは、必ずしも教科書通りではないと思うんです。せっかく実務を経験しているので、基準となる理論を抑えておく方が良いと考えて簿記を勉強することにしました。そうすれば、今の実務が理論からどのくらい乖離しているか、という一つの距離感がつかめますので、新しい事象が起きたとしても、教科書的にはこうだけど、落としどころはここかなという感覚がわかるのではないかと考えました。(中略)御社の実務についても、理論通りではない独自の部分があるかとは思いますが、これまでも真ん中がどこかという点を意識してきていますので、比較的早く御社の実務に慣れることができると考えています。」

長くなりましたのでFASSの件とかは、また別の記事で。

関連記事:経理で使う英語は、アニュアルレポートで勉強せよ

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投稿者:

白賀

30代。 経理職で転職を繰り返し、現在某社でファイナンスを担当しながら、非上場のスタートアップ会社でCFOを勤めています。

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