以前のエントリで、経理職内にカースト(階層)があることについて説明しました。現在経理職で働いている方は、自分がいる職場、または、自分のやっている仕事がどの階層なのかは概ね理解できたかと思います。
さて、これら経理職に存在する階層については、以下の特徴があります。自分の給与・出世に関わる大事な部分ですので、よく理解しておきましょう。
経理職としての階層と年収は、関係がない(ただし、一番下の階層を除く)
年収を決める唯一にして絶対的な条件は、「その会社が儲かっているかどうか/儲かる構造か?」です。まずは、儲かるか儲からないかがあって、その後に、経営者が社員に還元する気があるかどうか。この順番以外、絶対にあり得ません。空前絶後の赤字を垂れ流しながらも、東京電力の経理の人はそれなりの年収を貰っているはずですが、それは、東京電力がコストプラスで電気代を決めることが許される「儲かる構造」だからです。
したがって、階層と年収は、それほど関係ありません。むしろ、構造上利益率が低い会社の方が、経理がしっかりしていないと会社が潰れてしまうので、経理がしっかりしていることすらあります。
年収を上げたければ、「儲かっている会社」にウケが良くなるよう振る舞うこと
年収を上げたければ、なりふり構わず、儲かっている会社に入ることです。
卑近な例で恐縮ですが、武豊(たけゆたか:日本中央競馬会を代表する騎手)が勝つのは、本人の技術もありますが、絶対的に、強い馬に乗せてもらえる確率が高いからです。もちろん、ぎりぎり8位入賞くらいの馬を3位くらいまで持っていく実力はあるはずです。ただ、それだけで勝っているわけではなく、そういう実績や期待があるからこそ、強い馬に乗せてもらえて、結果勝っているわけです。最近はちょっと勢いが衰えているようですが。
さて、経理職がどうかというと、この業界は極めて閉鎖的で、仕事の実績が見えにくく、労働市場としては明らかに不完全です。だから、面接や職務経歴書で、期待を煽る技術さえ身につければ、年収を上げること自体は、非常に簡単です。半日くらい私が付きっ切りで職務経歴書の添削と面接の技術を叩き込めば、100万200万の年収増くらいの会社には簡単にブチ込める自信があります。笑
ただし、一番下の階層については、儲かる儲からない以前に会社の規模が小さいので、会社規模相応の年収になりますのでご注意を。
社内における経理職の年収や出世は、どの階層にいるか次第で決まる
会社の中での出世コースとそうでないコースというのがあることはみなさんご存じのとおりかと思います。経理職においても、階層により、ハッキリと出世に関する傾向が出ていますので、ここで整理しておきましょう。
第1階層(CFO候補)、第2階層(システムオペレーター)の経理職は、出世コース
第1階層、第2階層は、出世コースであることが多いです。
会社の意思決定に近いところにいるという組織上の理由と、計数管理に明るくなるという教育上の理由があります。
また、これ以外に、経理の仕組み自体が比較的しっかりしていることで「経理の専門家ではない人」を経理に配属させることができる、つまり、幅広い人材を経理に入れることができるため、その分他部署に経理出身者を出しやすく、経理出身者が他部署で出世していくという良い循環があります。
ただし、第1階層や第2階層でも、税務などで多額の追徴を受けた場合や、運用で大きな損失を出した場合は、結果的に回収できたとしても大きなマイナスをつけられることがあるので注意しましょう。そもそもマイナスが付きにくい部署だけに、明らかにマイナスに近いことが起きると、部署内での生贄になりかねませんので。
第3階層(経理職人)は、出世コース外で、頭打ち
他方、第3階層は残念ながら出世コースから外れていることが多いです。これは、一つには、日々力技でパチパチPCを叩いていることによるスキルや能力向上機会の逸失が原因です。
問題はもっと根深くて、これ以外に、仕組みがしっかりしていないことで、経理としての高度な注意力がなければ安定的な決算を行うことができず、結果的に仕事が俗人化してしまうという構造上の問題があります。経理のブラック化の始まりです。
このため、他部署に人を出したくても満足に出すことができず小さく凝り固まってしまい、経理出身者で、他部署で活躍する人が生まれないという悪循環が生じています。
いや、正確には、経理出身者で他部署で活躍する人は出てくるには出てくるんです。ただ、そういう人は、ほぼ例外なく、第3階層の経理で必要となる「高度な注意力」みたいなものに対してオエーッwという嫌悪感を抱いていますので、他部署に出た瞬間に経理を見下し始めることが多いんです。例えばですよ、「労働保険を前払費用で処理するときは、年度更新時に前年度分をキチンと精算できるよう明細や整理番号を分けて管理する方が良い」とか、別に、経営の本質に影響しないじゃないですか?
したがって、経理の立ち位置の低さが、不幸にもその経理出身者により強化されるというさらなる悪循環です。経理のプレゼンスを高めることに注力するか、外圧をうまく使って第2階層以上に引き上げるような企てをするか、場合によっては3年程度での転職を考えながら計画的に働きましょう。他部署に逃げるのも一つの方法ですが、その時は元同僚の経理の人にやさしくしてあげて欲しいなあ。
第4階層(総務課員)の経理職の命運は、会社が大きくなるかどうか次第
第4階層は、会社が大きくなるにつれて、第2階層か第3階層になりますが、その時の経理部門のトップは、その時必要な人を外部から招聘するので、基本的にそのまま出世していくことはなく、良くて総務部長までです。
「その時必要な人」というのは、例えば、事業拡大のために外部借入やエクイティファイナンスが必要なら金融機関出身者などのお金を引いてくることに長けた人が対象となり、上場を控えているのであれば、会計士や上場企業の経理出身者などです。
会社が大きくなっていくにつれて会社にとって必要な人が変わっていくように、残念ながらその仕事は、第4階層の経理職が今までやっていた仕事とは全く違うというのが実態です。
結果、軸足を総務側にずらしていくか、人事の、それも採用側ではなく、給与側にずらしていく形になります。経理として残る場合は、生き字引的な、「昔のことに詳しい人」というポジションで、細く長い生き残りを目指す形になります。
ただ、新しく入ってくるボスは、生き字引がいちいち細かいことを進言してくることを目障りと思う可能性がありますので、経理として生き残りをかける場合は、十分注意してください。
こんなことを書いてしまうと損な役回りで良いことがないように見えますが、ご安心ください。回りを見渡せば、ほとんどの会社は第4階層で、本当の意味で潰しが効くのはこの階層です。感じの良い人でありさえすれば、就職先はいくらでもありますので、ご安心を。