以前の記事で、開示資料作成担当として転職したいなら、その会社が宝印刷を使っているかプロネクサスを使っているかを把握しておく方が良いと書きました。
今回は、有価証券報告書などのEDINET掲載資料をもとに、その会社が宝印刷とプロネクサスのどちらを使用しているかを見分ける方法をお伝えします。どちらがシェアを持っているかも、この方法で確認可能です。ここまでわかるディスクロージャー担当は、全体の1%以下でしょう。
この方法は、経理で開示資料作成担当として転職したい人以外に、宝印刷やプロネクサスの株を買ってひと儲けしたい人にもオススメの方法です。私もこれで、多少儲けさせてもらったことがあります。笑
宝印刷とプロネクサスでは、作成される資料がちょっとだけ違う
これは、経理の実務担当者、それも、開示資料作成経験者の中でもあまり知られていないことなんですが、実は、宝印刷とプロネクサスとで、同じ資料を作成したとしても、作成されるモノが少しだけ違うんです。
これは、有価証券報告書でも、四半期報告書でも、内部統制報告書でも、臨時報告書でも、EDINETに掲載されるものであれば、ほぼ全てについて当てはまります。(EDINETの使い方についてはこちらの記事をご参照ください)
もちろんこれらは、法定の資料であって、ルールに従って作成されているものです。したがって、内容的にどちらが良い悪いというものではありません。しかし、この微妙な差は、見る人が見れば一瞬でわかります。一方、そうでない人がどれだけ細かく読み込んだとしても、おそらく見つけることはできません。
新規上場の会社が、宝印刷とプロネクサスのどちらを使ったかもわかるようになる。
この差がわかるようになると、新規上場する会社が、宝印刷とプロネクサスのどちらを採用したかもわかるようになります。
このような情報は、当たり前のことですが、宝印刷からもプロネクサスからもわざわざ教えてくれるようなものではありません。でも、見る人が見れば、どちらが受注したかが一瞬でわかります。
例えば、2015年10月1日上場の九州フィナンシャルグループ(肥後銀行と鹿児島銀行の金融持株会社)は宝印刷で、同じく2015年10月1日上場のC&Fロジホールディングス(ヒューテックノオリンと名糖運輸の持株会社)はプロネクサスを使っています。
将来の話もしちゃうならば、2015年11月20日上場のベルシステム24は宝印刷です。
両社の決算書が出る前に、受注状況がわかるということは、より有利な投資判断ができる。
そうなんです。宝印刷とプロネクサスの業績が、事前に、ほぼ見えるんです。
例えばそうですね。日本郵政グループの上場ってありますよね。1987年のNTTの上場に次ぐくらいの大型株式公開だと言われています。郵政株で一儲けしてやろうとお考えの方も多いと思います。
ただ、それでは、やってることが普通の人と同じなので、運任せ、当たるも八卦、当たらぬも八卦の世界じゃないですか。
プロは違います。関連銘柄で儲けるんです。
本件、宝印刷が受注しているはずです。
招集通知や決議通知まで宝印刷がやることになるかどうかはわかりませんが、EDINET回りは、少なくとも宝印刷が取っています。招集通知や決議通知などの作成まで宝印刷がやることになるかどうかはまだ見えていません。ただ、決算報告エクスプレスや決算Xプレスなどの会社法関係の書類を連携作成する機能を持っていますので、普通は、宝印刷がそのまま受注しているはずです。
でも、宝印刷やプロネクサスの決算書って、まだ出てきていないですよね?そういう情報を先に把握できていたら、少し儲けることができそうな気がしますよね?
お教えしましょう。みんなには内緒ですよ。笑
(※以下の内容は、2015年10月時点で有効な方法です。この記事が証券取引等監視委員会によほど着目されることでもなければ、変わることはないと思いますが念のため)
宝印刷かプロネクサスかを判断するためのコツは「行間を読む」こと!
行間を読むんです。
はぁ~っ!?管理人ふざけたこと言ってんじゃねぇぞゴラァ!というリアクションが目に浮かびますが、良いんです。行間を読むんです。
やってみましょう。こちらは宝印刷の有価証券報告書です。
続きまして、こちらはプロネクサスの有価証券報告書です。
さてみなさん、うまく行間を読めましたか?
上の方で書きましたけれども、内容自体は法定のものなので、内容をいくら読んでも差はわかりませんからね。読むのは内容ではなく、行間です。行間を読むことに集中してくださいね。
さて、カンの良い方はもう気付いたでしょうか。
まあ、そうは言っても、宝印刷とプロネクサスの開示資料を見ても仕方ありませんよね。
では、前回の記事で宝印刷を使用していることが判明した、三菱UFJフィナンシャル・グループの有報を見てみましょう。
今度は、同じく前回の記事でプロネクサスを使用していることが判明した、サッポロホールディングスの有報を見てみましょう。
もうわかりましたね?
宝印刷の行間は広くて、プロネクサスの行間は、狭い。
昔からそうなんですけれども、宝印刷は表紙が少し行間が空いていて、プロネクサスは行間がキッチリ詰まっている感じなんです。
全文XBRL化されたタイミングで行間を揃えてくるかなと思ってたんですが、そのままでした。もう、相手に合わせることは負けを認めることに等しいみたいな、プライドをかけた戦いなんでしょうか。笑
行間の広さなんて、どうでもいい差なので、誰もわざわざ変えない。
さて、前回の記事で、招集通知については、プロパティを見ただけではわからないことがあるとお伝えしました。東証への掲載前にプロパティに残った個人情報を消してしまったり、業者を使っていて情報が消えていたり。
覚えていますか?日本を代表するあの自動車会社は、招集通知を見ても、どちらを使っているかわかりませんでしたよね?
では、見てみましょう。
宝印刷でした。(もし違うのであれば、ご指摘ください>中の人)
つまり、誰もわざわざ行間なんて意識しないんですよ。与えられた標準のひな形(この業界では「たたき台」とも言います)をそのまま使うんです。しかも、宝印刷を使っている会社はよほどのことがない限りずっと宝印刷を使っていますし、プロネクサスを使っている会社も基本的にずっとプロネクサスを使っていますので、いまさら「この行間は、はたして適正な幅なのだろうか?」とか考えないんです。
他社事例を探しているうちに「なんか狭い/広いのがいるな?」とか気づこうにも、こうもハッキリ差が出るのは表紙だけなので、気づかないんです。表紙を検索する必要がないですから。っていうか、自社の有報の表紙の行間の幅がどのくらいかって意識している作成担当、そもそもいませんから。いたらヒマ過ぎでしょ、その人。(私です。笑)
これが、この方法のすごいことです。上場している会社であれば、すべて、それが宝印刷かプロネクサスか、判別可能なんです。確認する時間さえあれば、誰かに教えてもらわずとも、シェアがわかっちゃうんです。ステキでしょ?笑
他には、こんな面白いこともわかります。
以下は、富士フイルムホールディングスの有報です。前回の記事で、招集通知ではプロネクサスを使っているということが判明しています。
宝印刷なんですよ。(もし違っていたらご指摘くださいね>中の人)
招集通知と有価証券報告書で、プロネクサスと宝印刷を使い分けてるんです。こういう会社は、有価証券報告書は経理が作っているけれども、招集通知は総務や法務が作っていたりと、作成部署が分かれていることが多いです。
投資意思決定の参考にする場合は、あくまでも自己責任で。
さあ、見る人が見ればすぐわかる宝印刷とプロネクサスの見分け方。皆様、どう使いますか?
開示資料作成担当として経理で転職に必要なスキル、ということで紹介させていただいていますので、投資判断に使用したいという方は、あくまでも自己責任でやってくださいね。笑