階層を跨ぐ経理職の転職は、大きな苦労を伴う

今回は、経理職で転職するうえで、各階層がどのような影響を与えるかについて記載します。

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おおまかに言って、上の階層に行くと、「もっと効率良く仕事して、専門性をつけてもらわないと困ります」になり、下の階層に行くと「細かい実務もミスなくやってもらわないと困ります」になります。

これが、意外と高い壁で、うっかり階層を跨いでしまうと非常に大きな苦労を伴います。もし経理で転職を希望する場合は、このような事象が起きうるということを理解してから転職することをオススメします。知っているだけで避けられる問題も多々ありますので。

第4階層から第3階層だと「経理職」としての経験や知識が不足する

例えば、第4階層(総務課員)の人が持っている総務的な知識は、第3階層(経理職人)では、ほぼ使いません。

難しい経理の判断は、毎月来てくれる税理士の先生に任せている状態になりますので、ここが弱点となります。むしろ、交際費と会議費、あるいは、修繕費と固定資産の違いとか、印紙税や消費税、簡単な法人税の知識は持っていて欲しい、という話になります。

第3階層から第2階層だと、実務が時代遅れになっている

第3階層(経理職人)では請求書や決裁書とかを見ながら、高度な注意力で個々の伝票処理の判断を進めていきます。ところが、第2階層(システムオペレーター)では、上流の発注段階で摘要や用途などの情報をうまく収集できる仕組みを最初から持っていて、その時間を使ってもっと幅広い実務や、実務を深めています。

したがって、この場合は、「その仕事、うちの経理ではシステムがやってくれるからやらなくていいよ」ということになります。

経理職としての経験年数の割に、実務量が不足する

結果、第3階層(経理職人)の人が、第2階層(システムオペレーター)に入ると、経験年数の割に担当していた実務が少ないですね、という話になります。

「振替漏れによる仮払金や前払費用などの滞留がないかを確認してました」とか「勘定明細を作成してました」とか、間違っても職務経歴書に書いたり、面接で言ったりしない方が良いですよ。一定の確率で、「えっ!?それ、人間が手でやる仕事!?」という哀れみの目線を注がれながら、そっと面接が終了しますので。

しかし、何より残念なのは、第2階層の人は違う常識の世界で生きているので「そんな単純な仕事しか任せてもらえないということは、この人はもしかして残念な人なんじゃないか」というレッテルを心の中で貼られてしまうことです。

本当は仕組みが悪いだけで、前職では非常に前向きに頑張って仕事を任されてきていたのかもしれませんが、それを額面通り取ってもらえないというのは、非常に悲しいことだと思います。

ピボットテーブルなどの基本ツールを使いこなせない

第3階層では、システムに入ってくる情報の質が悪いので、そもそもピボットテーブルなどをあまり有効に使えるシーンがありません(フィルタを掛けながら目視で集計したりするのはよくある光景ですが)。

結果、ピボットテーブルの使い方も知らない経理の人っているんだね、という話になります。ちなみにこれは、未経験者が経理職に参入するのが難しいことの一つの理由でもあります。

第2階層から第1階層だと、考え出すための知識と経験が不足する

第1階層(CFO候補)は、高度に設計された会計情報処理の仕組みを前提とした、将来のことを考えたり、今までにないものを考えていく経理です。したがって、第2階層や第3階層の、結果の集計や報告に長けた人が入ってきても、パフォーマンスを出しにくい部分があります。

というのは、第2階層の経理職の人が得意なのは、100の時間をかけていた仕事をシステム化して30でできるようにしようとか、そういう仕事なんです。トヨタの新しい社債のような、新しい手法を考え出す経験を積んできたわけではないんです。ここで必要なのは、使えそうな情報を収集してくる力と、それを自社の状況に照らし合わせてうまく応用する力なんです。第2階層の経理職の人は、時間をうまく作ることはできる環境下にあることが多いので、情報収集の部分については問題ないことが多いですが、応用力の部分が不足していることが多いです。

下の階層への経理職の転職でも、同様に苦労する

これだけ悪いことを書き連ねると、「結局先に上の階層に入った方が有利じゃないか」と思うかもしれません。ところが、逆も然りで、同じように苦労するんです。

経理職で下の階層に転職すると、意図せずミスが多い人になる

例えば、第2階層の人が第3階層に行くと、明らかに担当する仕事の質は下がりますので、これはずいぶん舐められたもんだというような気分になります。私も昔、年収は多少上がったのに、やたら手間ばかりかかる、新卒みたいな仕事をさせられたことがありました。正直、当時は、これはボロイ会社だと思ってました。笑

ところが、「仕事の質をあげようにも、落とし穴が多くて上げられない」というのが第3階層の特徴です。

結果、よほど気をつけないと、ミスが多い人になりがちです。最初の数か月で転職者のイメージは固まってしまいますので、ここでミスが多い人のイメージがついてしまったら最後、挽回は困難です。

自分が想像している以上に、基本的な実務が分からない

例えば、第1階層の人は、投資家に対して見栄えする財務諸表にするにはどうしていくべきかということは日々考えていますが、タクソノミの設定方法やWORKS2やX-smartの使い方自体は正直どうでも良いと考えています。したがって、第2階層や第3階層の会社に行ってさあ打ってくれと言われても、多少オロオロします。転記するだけの仕事なら、派遣社員かアシスタントの人にやってもらえば良いと本気で考えてますからね、この層の人は。

実は、このくらいの話なら、まだかわいい方です。第2階層以上くらいの人がベンチャーに近いところに行ってよくあるのが、送金方法がわからないという笑い話です。上の階層の人は、どんなマスタをもってどんな送金データを作るかという概念上の話は知っているんです。ただ、具体的な送金方法自体がわからない、ということが十分あり得ます。

第4階層の会社の人は、VALUXは入れてないかもしれませんが、みんなネットバンキングやANSER-SPCの使い方は知ってますからね。こういう会社に転職してしまうと、「経理屋のくせに送金もできないなんて、たいそうな重役様でございますな」ということになります。

中途採用への応募時は、その会社の経理職がどの階層かを見極めておくこと

このように、階層を跨ぐ経理職の転職は、実務経験の有無や、経験年数の長さにかかわらず、大きな苦労を伴います。

経理職では、無駄に転職を繰り返すことは命取りになります。したがって、転職を検討する場合には、応募先の会社の経理職がどの階層かを十分確認し、検討したうえで、意思決定を行うようにしましょう。

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投稿者:

白賀

30代。 経理職で転職を繰り返し、現在某社でファイナンスを担当しながら、非上場のスタートアップ会社でCFOを勤めています。

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