ブラック化が進む経理職で生き残るための方法

最近、いや、これからの傾向と言えますが、経理職ではブラック化が進んでいきます。これは確実にそうなると言い切れます。

非常に残念なことですが、特に、比較的儲かっている会社で、これからも会社を大きくしていこうという会社ほど、この傾向は強くなっています。この理由がなぜかわかりますか?

経理部門の支出は、何であれ、短期的に会社の損益を悪化させる。

経理部門は、みなさんご存じのとおり、コストセンターです。売上を一切上げません。

したがって、経理部署で費用を発生させることは、それが何であれ、短期的には会社の損益を悪化させます。このシステムを入れれば将来的に何人削減できますとか、そういうコストメリットが長期的に出るとしても、短期的には費用が先行します。これは、構造上絶対です。

管理会計上こういう情報を管理して業績を確認していきたいから、とか、経営判断に必要な情報としてこういう指標を取りたいから、とか、そういう話がいくらあったとしても、それが実際に経営に役に立つようになるのは、2年とか、3年とか先の話になります。

投資家が超短期の業績しか見ないなか、長期的な施策を採りにくくなっている。

以前、別の記事で、
「衝動」に支配される世界、という本を最近読んだと書きました。

これに、本当に恐ろしいことが書いてあります。以下、抜粋です。

2005年に企業のCFO(最高財務責任者)400人以上に対して行われたアンケート結果は、驚くべきものだった。半数のCFOが、今四半期の利益目標を達成するためであれば、収益力のある長期プロジェクトへの投資をためらわず遅らせると答えた。また、5分の4近くが、翌四半期の利益を守るためであれば、研究開発やメンテナンス、広告、採用への当期の支出を削減すると答えたのだ。どれも長期的な収益力の確保には欠かせない「資産」である。

(「衝動」に支配される世界 - 我慢しない消費者が社会を食いつくす/ポール・ロバーツ著/ダイヤモンド社発行/2015年3月19日 第1刷)

この記載は、驚くほど私の感覚に一致しています。

「それはアメリカの話であって、日本では違うでしょ?」と思うでしょうか?

2015年に会社法が改正されました。これに合わせ、コーポレート・ガバナンスコードというものが導入されました。これらは全て、日本を代表する上場企業が、国際金融社会のルールに歩み寄ることを意味します。経営陣の考え方も、これらのルールに合わせる形で徐々に変わっていくことは間違いありません。上場企業で、株式市場を使って事業拡大をしていこうという勢いのある会社ほど、その影響を強く受けることは確実です。

経理部門の支出は、最初に見送られる。CFOは、投資家の圧力を最も近くで受けていて、かつ、経理部門を統括しているから。

日々強い圧力を投資家から受けているCFOが、今期の業績を守るために行うことは何でしょうか?

最初に、設備投資が見送られます。そして次に、正社員の採用が見送られます。柔軟に判断できる正社員を採用せざるを得ないような状態になったときは、5年くらい働いてくれればいいやという感覚で、会計士を採用して、使い捨てる感じになります。

結果、何が起きるかというと、本当にどうにもならなくなるレベルまで、システムの入れ替え等が行われなくなります。本当にどうにもならなくなるレベルというのは、20年間くらい改善をせずに力技で実務を回していたような状態のことをを意味します。

その時あなたは何歳ですか?

経理職の転職には年齢制限がある、と以前の記事で書きました。どうにもならなくなった段階でようやく会社が対応してくれたとしても、その時、他社と比較して一周遅れの実務をやっていたとして、他社への転職は可能でしょうか?

最近は、会計システム自体が自動で仕訳を起こしてくれるようなものも増えてきています。一方で、遅れている会社は、今でもいちいち口座振替に対して仕訳を切り続けています。それらがすべて自動化され、新しい仕組みで仕事が回るようになり始めたとき、リストラ対象とならずに、仕事で付加価値を出し続けることができるでしょうか。就業時間外に勉強をしようにも、それまでは「どうにもならなくなる状態」ですので、日々、長時間の残業をさせられている状態になっています。

私は、冗談抜きで、今の会社の実務が少し遅れているかもしれないという心配がある人は、freeeのようなソフトを、個人的なスキルアップとして、使う練習をしておく方が良いと考えています。

時代遅れとなった経理の実務屋には、COBOL職人のような居場所はない。

かつて、システムの世界でも「脱ホスト」とか「オープン化」というような標語と合わせて、大きな変化がありました。Javaなどで動くシステムに変えて行こうという流れなのですが、その背景には、COBOLという言語で書かれているシステムが多く、時代の変遷とともにその職人がいなくなってしまうという問題がありました。

そのCOBOL職人は、最後まで、一応職がある状態です。なぜなら、システムは、言語を読める人がいなければブラックボックスで、作り変えることすらできないからです。システム自体が会社によって違うため、中身を読める人がいないとどうにもならないという障壁があったからです。

さて、経理職でも同じように昔の手法での業務をしている人が生き残る方法があるかというと、残念ながら、そうはいきません。会計はただのルールですので、ルール通りに処理をすれば、多少科目は変わってしまうことはあっても、ほとんど同じ結果になるからです。替えが効いてしまうんです。

今後、非上場の会社の方が、外圧が少なく、ホワイト経理職の確率が高くなる。ベンチャーへの転職も恐れるな。

私は、経理業界がこれからどうなってしまうのか、本当に心配で仕方がありません。

志のある数少ない会社は、経理、特に、管理会計が会社の意思決定において重要だということを理解していて、そのための設備投資を今でも続けています。ただ、そういう会社は、投資家にあれこれとうるさく言われていない会社が多く、株式市場でのパフォーマンスはあまりよくありません。

また、最近設立されたような会社は、最新の仕組みを使って実務をしていますので、実務のレベル自体は比較的マシです。(どんな立場で入るかにもよりますが)

経理は間接部門だから安心だと驕らず、転職市場における自分の価値を維持するような活動を続けていくこと、それがこれからも経理職として生き残っていくうえで重要です。

場合によっては、ベンチャーの経理職に転職の方が、進んだシステムを使っていて、実務自体の無駄が少ないということもあり得ます。小さいからと言って、侮ってはいけない時代がもうそこまで来ています。

転職を考える前から、継続的に転職市場での自分の価値を確認しておこう

リクナビNEXTでも何でも良いんですが、とにかく、常日頃から、自分がどのくらい声を掛けてもらえるかを確認しておくことが大事です。オファーが一つもこないようであれば、何かが不足しているということですので、スキルを身に付けるなり、経験を積むなり、何かを変える必要があるということです。具体的な方法は、また別の記事に記載します。

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投稿者:

白賀

30代。 経理職で転職を繰り返し、現在某社でファイナンスを担当しながら、非上場のスタートアップ会社でCFOを勤めています。

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