開示資料を作成してみたい人の志望動機・自己PR

経理職の仕事をされていた方の中には、決算短信や会社法の計算書類、あるいは、有価証券報告書(ゆうかしょうけんほうこくしょ、通称「有報:ゆうほう」)などの開示資料を作成されている方も多いかと思います。

開示資料作成というのは、代表取締役やCFOなどによる決算発表などに密接する、非常に経営陣に近い仕事となります。したがって、開示資料作成の仕事を担当しておくというのは、会社で成り上がろうとするうえでは重要です。

今回は、開示資料を作成してみたいという経理の転職志望者への鉄板ネタを仕込んでおきたいと思います。転職したら次の会社では良いポジションにつきたい、という方は必見です。でも、開示資料を作ったことがないのに作ったことがあるとかいうウソはいけませんよ。ウソついてもバレないレベルまでネタを仕込むのが経理業界ナビのセールスポイントではありますが。笑

上場企業の開示資料作成ツールは、プロネクサスか宝印刷のみ。

上場会社の開示資料作成は、株式会社プロネクサス(7893:通称 プロネク)が提供するPRONEXUS WORKS(プロネクサスワークス)か、宝印刷株式会社(7921:通称 タカラ)が提供するX-smart(エックススマート)しかありません。プロネクサスは、2005年までは亜細亜証券印刷(通称 アジショー)という社名でした。ちょっと前までは

「有報は亜細亜証券印刷のシステムで作ってました、ああそうだ今はアジショーじゃなくてプロネクサスでしたね」

とでも言っておけば、それだけで自然と開示経験が豊富そうなイメージを植え付けることが可能でした。ただ、この説明ができるようにと考えると、年齢的にちょっとギリギリ過ぎるので、別の路線で行きましょう。

まずは、金融商品取引法が要求する開示についての全貌を理解しよう。

まずは、昔話を含めた概要からご説明します。わざわざ昔話からお伝えしておくのは、面接中に昔話をチョイチョイ挟むことで、経験豊富そうに見せることができるだろうという配慮からです。笑

上場している会社は、金融商品取引法(きんゆうしょうひんとりひきほう、通称「金商法:きんしょうほう」)の規定により年に1度、有報を金融庁に提出する必要があります。昔は印刷物を金融庁の財務局(関東財務局であれば「かんざい」)に提出していたんですが、2004年以降は、電子データをEDINET(えでぃねっと)という金融庁のサイトに提出することになっています。そもそも有報自体がどんな内容なのか見たこともないという方は、まずはこちらの記事をご覧ください。

当時は、HTMLを電子データとして提出していたのですが、2008年度より財務情報(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書など)についてXBRL(えっくすびーあーるえる)という様式で作成することになりました。

これまでは、HTMLが得意な人であれば、努力と根性だけで金融庁に電子データを作成することも可能でしたが、このXBRL化により、開示資料作成ビジネスが、プロネクと宝による完全複占市場となりました。今では両社とも元財務官僚などを役員として受け入れており、すっかり利権化しております。この2社の株を買っておけば、両方が同時に潰れることは、ありませんので安定的な運用が可能です。笑

XBRLとはどこからきた何者なのか?

XBRLの正式名称を知っている人はほとんどいないと思いますが、これは、Extended business reporting languageの略語です。XBRLが何の略語だったっけという点については、長い経理経験の中で、今まで一度も会話に出てきたことがないので、知らなくても全く問題ありません。ただ、どういう背景で生まれたどういう概念か、という点だけは把握しておきましょう。

2000年前後の会計ビックバン以降、会計や開示に関する制度がコロコロと変わっていきました。これらは全て、株式市場を含めた金融市場の国際化を背景としています。

国際化というのは、「海外投資家が日本に投資できるように制度を整えよ」という意味です。これには、会計基準自体を日本独自のニンジャ基準から世界標準に揃えていきなさいという比較可能性の向上と、開示自体を充実させていきなさいという開示情報へのアクセス向上の両方の側面がありました。

これを受けて、有価証券報告書の弟分のような形で四半期報告書(しはんきほうこくしょ、通称 四報:よんぽう)が導入されたり、EDINETの導入により、それまで紙で提出していた有価証券報告書がHTML化されたりもしました。

ただ、HTMLは閲覧者である投資家がデータを加工しにくいという欠点がありました。そこで、金融庁は「11111=現金預金=Cash and bank accounts」のような、共通したコードを用意することで、誰でも簡単にデータ加工をできるようにしようと考えました。

このコード体系を「タクソノミ」と言います。そして、そのコード(タクソノミ)と金額のセットでデータとして提出させるようにしました。上の例でいえば、「A社の2014年度の現金預金5百万円」を「A,2014,11111,5」として表現するイメージです。これがXBRLです。(理解を優先し、かなり端折ってますのであしからず)

こうすることで、金融庁がEDINETを通じて各社の有価証券報告書とともに各社のXBRLデータを公開すれば、投資家は、簡単に財務データを分析することができるようになりました。

次世代EDINET(全文XBRL)も、投資家への歩み寄りの一環。

さて、こうして2008年度より財務数値に関するXBRL化が始まりましたが、投資家の要求は留まるところを知らず、2013年度から、財務諸表以外の部分についてもXBRL化する「全文XBRL」というものが始まりました。要するに、会社の資本構成や注記情報の部分などについても、バサッとデータを落としてきて分析したい、という投資家の要求です。

これは「次世代EDINET」と呼ばれる大きな制度変更でして、宝印刷に至っては、これを機にそれまでのX-EDITOR(えっくすえでぃたー)というサービス名を捨てて、新しくX-smartという名前にサービス名自体を変えてしまったほどです。「今回の変更は今までとは全く違い、全てが変わってしまうレベルでの変更です。当社は金融庁の次世代EDINETのXBRL共同開発を受注しているくらいなので当社のサービスであれば大丈夫」という印象付けをしたいという宝側の営業戦略が透けて見えるというかなんというか。

ええ、もちろん相手のプロネクサスは従来通りのサービス名を維持していて「別にたいしたことありませんよ(=プロネクから宝に切り替えるほどのものではありませんよ)」というスタンスです。

面接では、担当者しか知らないようなことを織り込みつつ、大枠はボカすこと。

さて、ここまでの背景を理解したうえで、問題は、面接でどう対応するかです。

まずは、その会社が宝印刷を使っているかプロネクサスを使っているかを確認します。招集通知で確認する方法と、EDINET掲載書類で確認する方法の二つがあります。そして、その会社が宝なら、自分はプロネクサスを、その会社がプロネクサスなら自分は宝を使ってました、と言ってみましょう。

もし、自分の会社が上場会社で、宝を使っていて、導入事例とかにも出てきてしまっている(=面接官側で確認しようと思えばできる)のであれば、「宝を使っていたんですけれども、自分で入力したのは次世代EDINETになる前のX-EDITOR時代までなんですよね」とでも言っておきましょう。

これで細かい話は分からなくてもOKです。お前の会社は宝じゃなくてプロネクサスだろうが!というところまで気付ける面接官がいたら、あっぱれです。

そのうえで「タグ付けの方法が今までから少し変わっているとは聞いていますが、本質的には、どちらもワードに毛が生えたような操作感ですので、どちらであっても作成できると思います」と答えておけばOKです。

面接で使える開示あるあるはこれだ!

開示あるあるとしては以下のようなものがあるので抑えておきましょう。

「次世代EDINETになってからは、集中日にEDINETに提出しようとすると向こうのサーバが重くてなかなかアップロードできず、16時45分(EDINETの提出時間制限)が近づいてきて焦りますよね」

「EDINETにXBRLデータをアップロードした際のエラーチェックで、必ずw3cのエラーが出るじゃないですか。あれって、そのまま出して問題ないものなんですけれども、毎回不安になってプロネクサス/宝のサポートに電話してしまうんですよ。エラーが出ないように変えてくれればいいんですが、金融庁もお役所仕事ですよね」

このあたりにマニアックな話を少し織り込んでおけば、実務をやったことがある雰囲気は醸し出せるでしょう。

最近の潮流について触れておくことで、目線の高さを示す。

さて、最近は、「ユーレット(www.ullet.com)」や「株主プロ(www.kabupro.jp)」のようなXBRLデータを使用した自動生成のサイトが増えてきて、企業の分析が簡単に出来るようになってきています。このため、有価証券報告書の内容は、採用面においても影響が出てくるようになってきています。

したがって、例えば、こんなストーリーがあると、非常にリアルで、ウケが良いでしょう。

「最近、株主プロのように自動生成で有報の内容を開示しているサイトが増えてきて一般人が分析しやすくなっているので、人事部が同業他社比較での平均年収を非常に気にしていました。年収の部分は有報提出会社、つまり親会社単体の平均ということになるわけでして、極論すればホールディングス化してしまえば平均年収を上げて見せることはできるわけです。ただ、それはあまりに大掛かり過ぎる。じゃあどうしようかと考えたときに、シェアードサービスの会社を作って管理部門の若手だけを出向させてみたらどう見えるかとか、そういうことを考えまして、人事と一緒になって、3年目まで移動させたらどの水準になるかとか主任まで移動させたらこのくらいだなとか、そんな試算をしたりしてましたね。」

この流れを受けて、こんなことまで言ってみてはどうですか。最後に一言だけ自己PRさせてください、みたいな感じで。

「開示資料作成ということに関して言うと、今後も一般人が有報の記載内容を目にする機会はさまざまな局面で増えてくると考えています。例えば、優秀な技術者を取ろうとしたときに、売上高に占める研究開発費の割合がこれだけ多いからウチでは良い仕事ができるよ、とか、そういう総合的な会社のプレゼンテーションとしての役割も出てくると考えています。そうしたときに、開示される研究開発費の金額が大きく見せるためには、研究開発部門の人件費も研究開発費に組み替えておこうかとか、配賦される共通経費も全て研究開発費に組み替えておこうとか、もちろん合理的な範囲内でということになりますが、最終の開示を意識した組替だとか、仕訳自体の切り方も多少変わってくるものと考えています。御社にとっての大事な部分というのが何かというのは、入ってからしっかり勉強させていただくとして、ただルール通りの開示資料を作るだけではなくて、会社をより良く見せるにはどういう風にすれば良いかということを一緒に考えていくことで、御社に貢献できるのではないかと考えています。」

我ながら今日は良い作文ができましたので、よく眠れそうです。経理の他の仕事を希望する場合の自己PRや志望動機などについてもご要望があれば随時掲載していきたいと思います。ではまた。

投稿者:

白賀

30代。 経理職で転職を繰り返し、現在某社でファイナンスを担当しながら、非上場のスタートアップ会社でCFOを勤めています。

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